【のびる】読むを発展させてくれた本たち。

*ブックカバーチャレンジ 3日目*

何本ものアンテナが同時に勢いよく立ち上がったことで、受信する情報はそれまでの2倍にも3倍にも4倍にもなり、果てがないように感じていました。

高校生の頃は、電車通学だったので、学校の行き帰りによく本を読みました。
持ち歩ける文庫本を漁るように買ったのを覚えています。

母は活字中毒といっていいほどの人で、今は目が利かないとかで殆ど読まなくなりましたが、バッグには必ず本が入っている人でした。本がなければ、移動中に目にする広告や説明書きなどを片っ端から読むような人で、私もその影響を大いに受けて育ちました。

そのような訳で、通学時に読む単行本を買うことには大賛成で、よく出資してもらいました。
その頃に買った本はいまだに本棚にあり、時折読んでいます。


ジョン・ディクスン・カーの作品から触手が伸び、推理もの、ミステリものを好んで読むようになった私が次に手を出したのは、エラリー・クイーン、コナン・ドイル、アイザック・アシモフ。

特にアシモフは、SF作品よりも「黒後家蜘蛛の会」シリーズが大好きで、貪るように読みました。

女人禁制の会員クラブ「ブラックウィドワーズ」に集うメンバーの機知に富んだ会話、ゲストが最後に提出する些細な謎を巡って交わされる推理、最後に給仕ヘンリーが目にも鮮やかな推理を披露する。
会場はいつも決まったレストランの一室で、いわゆるシチュエーションものなのだけど、メンバーの会話、ゲストの体験談で、読者は深夜バスに乗り、ニューヨークを歩き周り、ジョージアの田舎に行き、ビバリーヒルズにお邪魔し、暗黒街にも顔を出すという疑似体験をしている気分になります。
ほぼ会話だけで進行している文体が私には非常に楽しく、興味深く、夢中になりすぎて電車を乗り過ごすこともしばしばでした。


コナン・ドイルは原作よりも、研究本とか資料本を読むことが多かったです。好きで読んでた本のタイトルが出てこない…思い出したら追記します。


知識量が豊富ということに強い魅力を感じていた私は、博学な人を探すようになり、荒俣宏を見つけ出しました。高校生の私、えらい!
小説家、翻訳家、編集者、タレント…と沢山の顔を持つ方ですが、篦棒な博物学の知識に圧倒され「将来、荒俣さんみたいになりたい」と無謀な夢を持ったものです。すぐに無理だとわかりましたが…(遠い目…

荒俣宏絡みで読んだ本は、
ロード・ダンセイニ「魔法使いの弟子」筑摩書房
ラヴクラフト他「ク・リトル・リトル神話集」国書刊行会
「歌舞伎キャラクター事典」新書館
「ファンタスティック12」リブロポート
他、多種多様な分野の本があるのですが、まったく追いつけず、心が折れました…未だに憧れていますが(未練がましい…

これらの本により幻想世界というワードが、私の中に大きく横たわり始めました。


通学時に読み易いということで、文庫本を多く読んでいましたが、この頃に日本の作家にも親しみました。


下村湖人「次郎物語」岩波書店
家族間の理不尽さを味わった作品。次男坊だから…とか、短気だから…という理由で、常に弾き出される主人公…スルスルと読めるのですが、確か未完だったような。主人公の次郎がこれから新たな人生を歩き出すぞ、というようなところで尻切れトンボのように終わっていた気がします。


星新一「悪魔のいる天国」「宇宙の声」「未来いそっぷ」
ショートショートの面白さを知った作品達。軽妙洒脱な文体、予想の斜め上をいく展開と結末、捻りの効いたセリフ。どれをとってもモダンで素敵でした。


小松左京「地球になった男」新潮社
「復活の日」「日本沈没」など映画化されたものは観たことありましたが、読んだことはなかったので、なにやら新鮮に感じたのを覚えています。「マタンゴ」大好きだったな…。


筒井康隆「笑うな」新潮社
筒井さんの短編集は珍しかったように思います。皮肉たっぷりで頭を使う笑いが好きでした。
ラーメンズシティボーイズイッセー尾形が好きなのも、頭を使う笑いだから…なのかも。おっと脱線しました。


「日本探偵小説全集」東京創元社
東京創元社はカー作品を出版していた会社で、馴染みがあったため、いきなり全集を買うという…。

この全集のお陰で、黒岩涙香、小酒井不木、甲賀三郎、夢野久作、木々高太郎、大下宇陀児、坂口安吾、横溝正史、久生十蘭、小栗虫太郎、岡本綺堂を知ることができました。
夢野久作はね…控えめに言って最高です。
横溝作品は角川映画が素晴らしく映像化してくれていますね。「犬神家の一族」は頭の中で勝手に再生されます。ふとした拍子に「愛のバラード」が流れてきて、脳内で本編が再生されちゃうんですよ…。「八つ墓村」は山崎努の例の場面が美しくて…あの作品も、脳内で勝手に再生されますね…。


その他、

芥川龍之介「芋粥」「蜘蛛の糸」「手巾(ハンカチ)」「奉教人の死」「六の宮の姫君」「貉」
ラストの静けさ…いつも読み手に考える余地を与えてくれる。「なぜそうなのか?」という問い掛けを身に付けた作品達です。


夏目漱石「彼岸過迄」「こころ」「夢十夜」「我輩は猫である」
胃痛持ちだった漱石先生。あのアンニュイな写真は胃が痛くて憂鬱だったから…だとか。作品の多くは憂鬱で、病弱で、救いのないラスト。猫は念仏を唱えながら井戸で亡くなるんだよ…ヒドイ(T ^ T)


井上ひさし「不忠臣蔵」
内容は覚えていないのに、この本を境に忠臣蔵ものが好きになり、映像作品を多く観るようになったので、今回のテーマに沿っているかもと思い、入れてみました。
忠臣蔵といえば「天の巻・地の巻」千恵蔵もアラカンも美しいが過ぎる…罪だわ。
「忠臣蔵」での長谷川一夫、市川雷蔵も美しいが過ぎる…幸せじゃ…。
毎年、年末になると忠臣蔵の新作ドラマや昔の映画が放映されて、それが楽しみだったのだけど、いつの頃からかやらなくなりましたよね…ちょっと寂しい…。


大岡昇平「野火」
戦争の悲惨さ…という表現が陳腐に思える作品。心を抉られるような読書体験でした。


泉鏡花「外科室」「化鳥」「高野聖」「天守物語」
明治時代の文体が面白くて大好きでした。「外科室」は坂東玉三郎が吉永小百合を迎えて映画化しました。玉三郎さまの美意識がこれでもか!とばかり詰め込まれています。原作はほんの3〜4頁の短編ですが、深く心に残る作品。読むたびに号泣です。そして「高野聖」は怖い…うなされる…。


小泉八雲「怪談」(西洋人だけど、誰よりも日本人ぽいと思う)
「耳なし芳一」「雪女」など、誰でも一度は聞いたり読んだりしたことのある怪談を集めた作品集。
外国の人が日本を紹介するということ自体に興味がわき、「モースの見た日本」という資料本を購入。家でニヤニヤ見ていました。



高校生の頃からずっと、複数冊同時に読むことが好きで、鞄の中には常に3〜4冊の文庫本が入っていました。読んでる内容がよくごっちゃにならなかったなぁ…若いって凄いのね。

作家ごとに異なる個性的な文体に惹かれ、文章の書き方や関連本も買ったなぁ。
「分かりやすい文章の技術」「声に出して読みたい日本語」
…他にも何冊かあった気がしたけど。思い出せないから、まぁ、良しとするか…。

好きな作家さんの文章をそのまま書き写すってこともしていたなぁ…懐かしい…。
池波正太郎さんはよく真似しました。
文章が上手くなりたければ新聞や雑誌のコラムの構成を参考にしなさいよってなことを母に言われ、「天声人語」を文字数確認しながら読んだりしていました。

そんな頃、活字中毒な母から、誕生日祝いにとラルフ・ブラム「ルーンの書」をもらいました。
文章を書くこととは関係性がないように思い、不思議に思っていると、
「なんだかプレゼントしないといけないような気がして」
との返事。
「だって、ムーが好きでよく読んでるでしょ?こういうの好きなんじゃないの?」
言われて初めて、そういえば、目に見えない不思議な世界が好きなんだな…と氣がつきました。


この突然のプレゼントをもらったのは、確か父が亡くなってからだったと記憶しています。
父が亡くなってすぐ、母は鬱になってしまい、半年ほど引き篭もった生活をしていました。
今考えると軽度の鬱なのですが、当時は出口はあるのだろうか?と不安でした。
母の状態を理解したくて、心理学関連の本を読むようになり、なぜか哲学書や宗教関連の本にも手を出していました。当時の母からしたら、私の方が鬱状態に見えていたのかもしれません。

「ルーンの書」は、気分転換になるものはないか?と探していて見つけたと言っていました。
目が惹きつけられて「これだ!」と直観したそうです。


ルーン文字が刻まれた石達がやって来たことで、私の世界に新しい光が入り始めました。


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この「新しい光」は、本を選ぶ基準を変化させ、乱暴なくらいに食指を動かしていきました。
次回は、欲望のままに動く食指が何を選んだのか、紹介します。


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7つのテーマ

1日目【さわり】読むことを学んだ本たち。

2日目【ころぶ】アンテナの方向性に変化を与えた本たち。

3日目【のびる】読むを発展させてくれた本たち。←イマココ

4日目【よりみち】食指が動きまくった本たち。

5日目【のぼる】読む目的を持って漁った本たち。

6日目【きする】結局、これが好きだと氣づいた本たち。

7日目【しんてんち・ふか】新たな世界観を学んだ本たち。


補足1:
事情により義母の家にいるので、ご紹介する本は私が撮ったものではなく、密林や出版社の紹介写真になりますことをお許しください。


補足2:
バトンをお渡しする人を特定しません。
ご紹介していく本をみて「あ、私もやりたい」とワクワクした方がいらしたら、どうぞチャレンジを始めてみてください。 


読書好きによる読書好きの為の時間になりますように。 未来の読書好きに捧げます。 

通奏底音

内側の光、氣づきを現実化するには、 身体(body)心(mind)魂(spirit)の癒しが 不可欠です。 「本来の自分」として生きるには、 この3つのうち、どれが欠けてもままなりません。 「本来の自分」が望む世界を現実化するための、 勇氣ある一歩を踏み出すあなたに、 癒しと学びをご提供しています。 心と身体、魂の癒しを学び伝える ◎ 通奏底音